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読書 ときどき 文房具

「メンタルヘルス」「心理学」「脳」「読み書きスキル向上」「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」「読書・仕事等に使える文房具」等々

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論 ジュリオ・トノーニ(著) マルチェッロ・マッスィミーニ(著) 花本知子(訳)

 本書は脳と意識の関係を解き明かそうとする試みについて書かれた本です。

まず、著者らが直面するのが、意識とは何かという問題です。

関連文献を読み進めようとするも、「意識」という用語の使われ方が、途方に暮れるほど千差万別で、定義が様々であることに気づきます。

そこで、脳を理解すること、意識の問題に立ち向かうことになります。

 

ここで登場するのが「統合情報理論」です。

この理論は、「情報量」と「統合」という視点から意識を以下のように定義します。

 意識を生みだす基盤はおびただしい数の状態を区別できる、統合された存在である。つまり、ある身体システムが情報を統合できるならそのシステムには意識がある。

そして、この意識があるという状態を数値化するために、情報量のビットで表されるΦ(ファイ)という単位を使います。

さらに、Φを測定するということを、以下のような作業指標に落とし込みます。

脳の情報統合能力を測るには、大脳皮質ニューロンの集合体をじかに刺激しなければならない(中核への直接アクセス)。

そうやって、反応の広がり(統合)や複雑さ(情報量)を記録するのである。反応はミリ秒単位で起こる(意識の時間スケール)。

 

はい、ここまで読んでも何のことやらというところでしょう。

しかし、この本における「意識の定義」「意識の測定」については、欠かすことのできない要素なので、引用も交え、できるだけ短く説明させてもらいました。

この理論的な話について、脳の仕組み、デジタル機器との比較、最新の測定技術等を踏まえて、説明がなされており、実際に読んでみると、そんなに難しいことは書いてありません。

科学的であることから外れないようにするために、一つ一つていねいに説明してあるという印象です。

かなりざっくり言うと、意識があるとは、たくさんの情報から、必要なものを選んで(他のものを選ばないで)、それをまとめることができる状態であり、その時の脳の働きを測定しようということでいいと思います

 

さて、意識を数値化したうえで、話題となるのが、臨床の現場です。

植物状態の患者はこの定義では意識は無いようです。

しかし、最小意識状態やロックトイン(閉じ込め)状態の患者においては、意識が無いよう見えても、意識がある場合がある。

実際の臨床現場では、この見極めが非常に難しく、適切な対応ができていないケースが想定されます。

 まだまだ実験段階であり、この測定方法が実用化され、患者の状態を正確に把握することが可能になれば、臨床の現場へでの活用が期待できます。

脳死や延命治療といった視点からも、重要なアプローチになりそうです。

ちなみに、この考え方では、ノンレム睡眠時は意識はなく、レム睡眠時には意識はあるで、意識がないから死んでいるという考えをするものではありません。

 

その他、意識は人間以外にも存在するのかという話題にも触れてあります。

この点については、今のところ知る術はないとのことでした。

 

脳を具体的な物質としてイメージさせるために、著者らが手のひらに脳を置いた経験が書かれいます。

また、第1章から最終章までシンメトリックな構成となっています(前半の四つの章が問い、第五章が読み解きの鍵、後半の四つの章が前半の問いの答え)。

そのような工夫から、読み物としても興味深く読めました。

 

意識は脳に宿るという前提は、受け入れやすいところでしょう。

それをどのようにとらえ、どう活用するのか。

今後、人間の脳はどこまで解明されるのか、そして、それが僕らに何をもたらすのか。

 今後の動向から目が離せませんね。