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【ネタバレあり!】配達されたい私たち 一色伸幸

これまで小説の記事もいくつか書いています。

小説の記事は「ネタバレ」をしないように、できるだけ話の内容に突っ込み過ぎないように書いてきました。

例えば、『十二人の死にたい子どもたち』の時は次のような記事です。 

www.saaiwa819.com

 

しかし、今回の本は「ネタバレ」しないと記事にできる気がしません。

そもそも、この本を読もうと思ったのは、『うつヌケ』という漫画がきっかけです。

『うつヌケ』は、うつ病経験者の体験談をまとめたものであり、その経験者の一人が著者の一色さんでした。

その体験談の中で、触れられていたのが、今回紹介する『配達されたい私たち』です。

『うつヌケ』の記事はこちらです。 

www.saaiwa819.com

 

このブログのプロフィールに「精神疾患」と書いていますが、僕もうつ病経験者(継続中)です。

今回の本では、経験者ならではの視点から、うつ病の主人公が描かれています。

なので、読んでいて、いろいろと感じることがある訳です。

そういう訳で、今回は「ネタバレ」ありの記事としました。

 

 

~以下ネタバレあり~

 

 

うつ病の主人公が、自殺を決意して、廃墟となった映画館で首をつろうした時に、7年前に配達されるはずだった、7通の手紙を見つけます。

主人公は、死ぬ前にその手紙を届けることにしました。

そして、配達先の人たちとの出会いにより、主人公の心にも変化が表れてきて・・・

そういう内容の小説です。

 

 主人公の心理描写には、共感できるところが多いのですが、うつ病でほとんど家を出ない人が、こんな面倒なことはやらないと思います。

少なくとも僕ならやりません。

この行動は、死にたいけど死にきれない主人公の、いい意味での逃げ道です。

話が進む中で、主人公のこれまでの生き様が、少しずつ明らかになるのですが、この主人公は、逃げてばかりの人生を歩んでいます。

その主人公が、「死」からも逃げるという設定で話が始まるのが、何とも皮肉な感じがしました。

「痛いのはいやだ」という主人公の心情も、それを表しているでしょう。

 

でも、この気持ちはよくわかります。

この本でも書かれていますが、「死にたい」のは病気の症状です。

「死にたい」のが日常と言っても、言い過ぎではないでしょう。

そして、「痛いのはいやだ」という点にも、完全に同意です。

「痛いのはいやだ」「苦しいのはいやだ」というが、自殺の一番の抑止力かもしれません。

 

 最終的に、主人公は自殺するのですが、未遂に終わり、植物状態となってしまいます。

体は動かないが、聴覚と嗅覚は残り、意識もあるという状況です。

そのような状況で「生きたい」と思うようになる主人公。

この結末には何とも後味が悪かったです。

自殺を止める訳でもなく、自殺で死んでしまう訳でもなく。

ただし、その後味の悪さこそ、著者が狙ったものとも思えます。

「自殺はしない方がいいよ」というメッセージとして。

 

7年前の手紙を届けられた人たちは、それぞれにドラマがあります。

そのドラマのひとつひとつがよくできており、短編集としても読むことができます。

その中で、主人公の過去が少しずつ明らかになっていくことで、小説の世界に引き込まれていきます。

また、うつ病経験者としては、「うつ病あるある」として、何度もうなずきながら読みました。

そういう意味では、うつ病の人やうつ病経験者に読んで欲しい本です。

でも、病気の経験が無い人に、病気を理解してもらうことにはならないかな。

 やっぱり、経験しないと分からないことってありますからね。