『ツレがうつになりまして。』の細川貂々さんが、対人関係療法を応用したカウンセリングを受ける様子を描いた作品です。
「対人関係療法はいわゆる病気の人のための治療法なので」、「病気なわけではなくて悩みがあって苦しいだけ」のてんてんさんは、対人関係カウンセリングを受けることになります。
「療法」も「カウンセリング」も考え方は同じようなので、以後は対人関係療法とします。
この本は「漫画」の間に「コラム」が挿入されているという、「まんがでわかる◯◯」の類と同じ構成になっています。
「まんがでわかる対人関係療法」といったところです。
「コラム」が「漫画」のまとめになっているので、「漫画」を楽しく読みながら、「コラム」で振り返るという読み方になるでしょう。
てんてんさんは、自分のことを「ネガティブ思考クイーン」と呼びます。
一日中ネガティブなことばかり考えているそうです。
てんてんさんは、そのことで苦しい思いをしています。
そこで、知り合いの紹介で対人関係療法をの専門家である水島広子先生に相談に行くことになりました。
では、対人関係療法とはどんなものでしょう。
おおまかに言えば、病気は対人関係の中で発症し、対人関係のおかげで治るというところに焦点を当てていく治療法とのことです。
「人は人と接していないと生きていけない」「でも人と接するから悩みが生まれてくる」
『嫌われる勇気』の「人間の悩みはすべて人間関係の悩みである」という言葉を思いだしました。
人間関係療法の説明にアドラー心理学という言葉は出てきませんが、通じる部分はあるように思います。
本のタイトルが『それでいい。』です。
「コラム3」の次の箇所が、とても印象的であり、対人関係療法の根幹をなす考え方といっていいでしょう。
人間の変化は、現状の肯定からしかあり得ないのです。今の自分を否定し続けていると、地に足の着いた変化など起こせないのです。まずは、「事情を考えれば、今の自分はこれでよいので(当然なのだ)」ということを認めた上で、「でも、できればこういうふうになっていきたいな」と思えれば、実際に変化は可能でしょう。
「それでいい」と言ってもらうことで、随分と気分が楽になりませんか。
「でも、できればこういうふうになっていきたいな」がなければ、そもそも悩むことはありません。
「こういうふうになっていきたいな」を実現するためにも、まずは現状を肯定しましょう。
そして、対人関係のなかで、それを実現していきましょう。
まずは、その点を理解しておく必要がありそうです。
ここで大事になってくるのが「言葉」です。
「自分こうなんです」「自分はこう思っています」
それをしっかりと伝えることで、相手との関係性を築いていく。
そのための考え方もしっかりと書かれています。
現時点では保険診療ではないものの、対人関係療法は医療行為であり、専門家の治療を受けないと、効果は限られてくるでしょう。
でも、この本が「それでいい」と言ってくれることで、気持ちが少しでも楽になると思います。
まずは「それでいい」のではないでしょうか。
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